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大阪家庭裁判所 昭和41年(少ハ)22号 決定 1967年1月17日

主文

少年を昭和四二年二月二八日まで中等少年院に継続して収容する。

理由

浪速少年院長樋口忠吉より、収容中の少年に対し、昭和四一年一二月一六日付書面を以て収容継続の申請をなし、該書面は翌一二月一七日当裁判所に到達した。

よつて、当裁判所は審案するのに、

少年は、昭和四〇年一二月二四日当裁判所のなした中等少年院送致の決定に基き、同月二五日浪速少年院に収容せられたのであるが、昭和四一年一二月二五日を以て二〇歳に達したものである。

少年は、その知能は普通級であるが、性格的には自我弱小で内気無気力、その反面好奇心が強く気が変り易く、又規範意識協調性自制心に乏しく、更に勤労意欲低く徒遊怠情な生活をしていたものであるのに鑑み、浪速少年院に於ては、職業技能を習得させるとともに勤労意欲と自制心の涵養に主眼をおいた処遇方針をたて、少年を昭和四一年三月一日職業訓練法に基く同少年院の職業訓練課程板金科に編入して教育して来たのであつて、その全課程を修了するのは昭和四二年二月二八日である。ところで、少年を満齢に達するとともに退院させるときは、職業訓練の全課程を修了させることができなくなつて、それまでの訓練の成果は活かされないことになるばかりでなく、所期の矯正目的も充分に達せられないことになる。

少年の少年院に於ける処遇経過は、昭和四一年二月二八日までは新入生生活訓練、三月一日職業訓練課程に編入、五月二日二級上、七月一六日一級下、一〇月一日一級上にそれぞれ進級したものであつて、一〇月四日新入生使役並にそり込により謹慎三日に処せられた外は成績稍良好であるが、それは少年院での指導により漸く保たれている成績であつて、指導が外されると容易に旧態に復する虞があり、少年の犯罪的傾向はまた充分矯正されたとは認められない。

そこで少年の将来のためには、上記職業訓練の全課程を修了させ、労働省の履習証明書(普通の職業訓練所の修了証明書と同一の効力を有する)を取得させることが最も適切な措置であるとともに、非行に陥ることを予防する機能を持つことになると思料するので、少年の犯罪的傾向のまだ充分に矯正されていないことと併せ考え、職業訓練課程の修了する昭和四二年二月二八日まで少年の収容を継続するを相当とし、少年院法第一一条第二項乃至第四項少年審判規則第五五条によつて主文のとおり決定する。

(裁判官 谷村経頼)

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